クラシックカメラ 今月の「ひとこと」

空前絶後!?のエアポンプシャッター

どうも。店主の早田清(はやたきよし)です。今回は、カメラの心臓部であるシャッターについてひとこと。戦前のカメラには、シャッター速度を制御するのにちいさなシリンダーの中の空気圧を利用するタイプのものがあったんですよ。原理的にはエアポンプシャッターと呼んでいいと思うんだけれど、このタイプはドイツのデッケル社が作っていたコンパウンドシャッターが有名なので、そう呼ぶことが多い。

コンパウンドシャッター
コンパウンドシャッター

それがしばらくすると、時計みたいに小さな振り子とバネを使ってスローシャッターを制御するものも現れてきます。これはダイヤルセットシャッターと呼ばれていて、ドイツのデッケル社が作ったコンパーシャッターなんかが有名。このあとシャッター速度を設定する部品がちいさなダイヤルからシャッターユニットの外枠にそって設けられたリムセット方式になり、以来ずっとそのパターンが続きます。

ダイヤルセットコンパー
ダイヤルセットコンパー

でね、エアポンプシャッターなんてとうの昔に消えてなくなったと思っていた矢先に、アグファが1956年に出したカメラに何と空気圧を利用したシャッターが使われていたんですよ。しかもこのカメラ、絞りを決めれば自動的に適正露出のシャッター速度が決まるという画期的な新製品だったんです。まぁ、あんまり数は作っていないけど‥。

アグファ・オートマチック66
アグファ・オートマチック66

いま店に置いてないので売り物の写真じゃないけれど、こんなカメラ。自動露出は戦前にスパーコダックsix-20が出ているけれど、このアグファはシャッター速度を自動制御しているのが画期的。いわゆる絞り優先オートのカメラとしては世界初だし、そのあとヤシカ・エレクトロ35が出てくるのは1966年だから10年近く先を行ってた。

自動露出の仕組み図
自動露出の仕組み図

言葉で説明してもムズカシイので、まぁ、中身はこんな感じになってるんです。露出計に連動して動く薄い板が、たくさん穴のあけられたポンプのフタの上を移動して、穴のふさぎ具合が変わることによってシャッター速度を変化させるという空前絶後のエアポンプシャッター。あまりに画期的(変態的?)すぎて、そのあとを追うものはいなかった‥。

ダースト66
ダースト66

と言いたいところなんだけど、同じ1956年にイタリアのダーストが出したカメラのシャッターが、なぜかエアポンプの原理を使っているんだよね。アグファを見て「これはイケル!」と思ったのか、たまたまリバイバルで採用した時期が重なったのか。でも、その後はエアポンプのシャッターって誰も使っていないんだよね。

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