クラシックカメラ 今月の「ひとこと」

ズミクロンの罠

どうも。店主の早田清(はやたきよし)です。今回はカメラじゃなくてレンズのことを話そうと思うんだけど、ちょうどいま整備している最中なのが、ライカのズミクロン50ミリ。このレンズには、修理をやってる人間なら何度か痛い目にあってると思うんだよね。

沈胴ズミクロン50ミリ
沈胴ズミクロン50ミリ

ライカといえば、ズミクロン。という人もいる定番の標準レンズ。分解の仕方なんかも、特に変な仕組みではないので普通にバラせる。

レンズを構成するパーツ群
レンズを構成するパーツ群

沈胴部分をバラすと、レンズとピント調整リングの部品にわかれる。レンズの方は普通にレンズと絞りを整備していけばいいんだけれど、ピント調整リングの方は、うっかりしていると大変なことになる。

ヘリコイドガイド
ヘリコイドガイド

まずは3本のネジで固定してあるガイドをはずす。ここまでは普通のレンズと同じ。これで無限と近接の定位置でストップがかけてある。

ヘリコイドを繰り出す
ヘリコイドを繰り出す

で、普通のレンズだと、どんどん繰り出してヘリコイドの溝を露出させていってポロッとはずしてヘリコイドの溝を洗って新しいグリスを入れて、ヘリコイドには何ヶ所も入り口の溝があるから間違えないように入れて組み直して完成なんだけど、ズミクロン50ミリのヘリコイドは一度はずしたら、そぉ簡単には入らない。

溝の中のグリス
溝の中のグリス

それは、この時代のライカのレンズに使われていた特殊なグリスのせいだと思うんだけど、一度はずしたヘリコイドは、すごく動きが渋くなるというか硬くて素手じゃ動かせない感じで、ウッ!ってリキんでも入り口のところで止まって1ミリも動かない。それでも辛抱強くウッ!と続けると、ほんの少しだけ動いてくれて、そんなことを7時間とか8時間くり返していかないかぎり最後まで進めないんだけれど、とにかく辛抱強く続けてそこまでやり遂げると何ごともなかったかのようにスルスルとヘリコイドが回るようになるんだよね。

アブナイ4兄弟
アブナイ4兄弟

ライカの修理人なら、必ずズミクロン50ミリの罠にハマった事があると思うんだけど、同じようにヘリコイドを抜いたら最後、地獄が待っているレンズはズミタール、ズマリット、それにズマールもそうだね。最初の4文字がSummのレンズが要注意。まぁ、お客さんは整備済みのレンズを使えばいいだけのことなので、ちゃんとヘリコイドがスムーズに回せるレンズかどうかだけ気にしておけば大丈夫ですよ。

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